早稲田中世の会

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2017年度春の例会のお知らせ

 2017年度春の例会のお知らせをいたします。ご多忙中とは存じますが、ぜひともご参会頂きたくお願い申し上げます。

 

一、日時   二〇一七年三月二十七日(火) 十四時から

一、会場   早稲田大学戸山キャンパス 三十九号館六階 第七会議室階

一、研究発表

 

(一)六代助命譚と『平家物語

                     文学研究科 修士三年 磯貝友希氏

 源平合戦後の平孫狩において、平維盛の遺児・六代御前は、文覚上人によって助命されたという。この物語は『平家物語』諸本を始め、『六代御前物語』『六代君物語』『六代』、謡曲『文覚』『六代ノ歌』『斎藤五』『菴六代』など、多くのテキストに取り挙げられ、著名である。

 特に、富倉徳次郎氏らによって『六代御前物語』が『平家物語』諸本の成立に関わっているという可能性が指摘されて以来、六代助命譚について盛んに論じられるようになった。また、六代をめぐる物語の観音利生譚的な側面についても、広く注目されてきた。一方で、先行研究は各テキストを個別に検討したものが多く、網羅的に比較した論は少ない。そこで本発表においては、『平家物語』諸本のみならず、六代助命譚に材をとる複数のテキストを幅広く論じる。それぞれのテキストを比較しながら、関連史料や他の観音利生譚との関係を検討することで、この物語の形成過程と享受の諸相を明らかにしたい。

 

(二)室町物語『玉藻前物語』の構造・表現と異国合戦譚

                      文学研究科 修士二年 高大河氏

 室町物語『玉藻前物語』は、仏法を敵とし王法を滅ぼさんとする妖狐・玉藻前が、天竺・漢土・日本の三国を股にかけて悪行を繰り返し、最終的には日本で討伐される物語である。

 本発表では、『玉藻前物語』が「異国由来の脅威に勝利し、その結果日本の王権が守られる」という構造を持つ点に注目する。『玉藻前物語』の構造や表現と、『八幡愚童訓』(甲本)をはじめとする中世の異国合戦についての説話および記録の構造や表現との比較を通して、『玉藻前物語』が蒙古襲来以後の、「異国に勝る神明の威力や王法」を誇る自国優位意識を含んだ異国合戦譚の一つと言えることを考察する。

 また、『玉藻前物語』は『八幡愚童訓』(甲本)と同様に犬追物の起源譚としての側面を持つ。本発表では、そこに見られる対異国意識や、十五世紀以降に『玉藻前物語』が流布し始めた原因の一つに中世の異国合戦が影響を及ぼしている可能性についても言及する。

 『玉藻前物語』と異国合戦の関連から見える当作品の新たな側面を明らかにしていきたい。

 

(三)西行法師『残集』考

                      文学研究科 博士一年 穴井潤氏

 本発表は、西行法師の家集『残集』(以下、本集)の研究の中間報告である。

 本集は昭和九年に伊藤嘉夫によって紹介された。その後冷泉家時雨亭文庫より定家手沢本が発見されたが、その家集としての特徴はいまだ十分に検討がなされているとは言いがたい。

 また、冒頭消息文の不可解さもあってか、研究史において様々な説が提唱されているが、研究者間でも認識が定まっていない嫌いがある。

 そこで本発表では、冒頭消息文をはじめとする先行研究からの問題点を整理し直し、家集の構成、詞書に登場する人物の傾向、他出との比較、西行の他家集(とくに『聞書集』)との関係、収載歌の特徴を検討することによって、本集がいかなる作品であるか考察することを目的とする。

 

 

 また、研究発表会の後、懇親会を予定しております。こちらも是非ご参加下さるようお願い申し上げます。

 

会場  かわうち

 

時間  十七時(予定)から

 

会費  三〇〇〇円