早稲田中世の会

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2014年度例会のお知らせ

  2014年度春の例会のお知らせをいたします。ご多忙中とは存じますが、是非ともご参会頂きたくお願い申し上げます。

 

一、日時 二〇一五年三月二十四日(火) 十四時から

一、会場 戸山キャンパス 三十六号館 六階 六八二教室

一、研究発表

(一)女性の老いの和歌の特質 

                    教育学研究科 修士二年 幾浦裕之氏

 老いは和歌において歳暮題、また述懐歌、賀歌のなかに詠まれてきた。そこには身体的な老いが表わされるのみならず、伝える相手との関係性への配慮が必要とされていた。中世では慈円、為家、高綱たちが嘆老歌を多く為しているため、老いを詠むことは和歌の中で一般的なことであるように見える。しかし、女性が自ら老いを詠む歌は中古、中世を通じて少ない。男性歌人たちが加齢を嘆きながら栄達を願い(述懐)相手の長寿を祝ぐ(慶賀)ために自ら老いを詠むのに対して、女性は相手に見いだされて初めて謙遜をこめて婉曲的に「老い」を詠む。ときに女性の嘆老歌は「我が身世にふる」や「うつろふ色」のように恋の歌とも解されるような形をもつ。このような老いの詠み方の男女差が存在する背景には何らかの規範が働いていたことが考えられる。本発表では女性の老いを詠む歌の特徴を男性のそれと対比しながら検討し、老いの和歌表現上の慣習、規範について考察する。

 

(二)仮名本『曽我物語』の諸本分類の再検討

                     文学研究科 修士三年 芳賀理知氏

 『曽我物語』の諸本は真名本と仮名本に大別され、近世に広く流布した仮名本は真名本に比べて物語の一貫性が無いと評価される。村上学氏は、仮名本『曽我物語』諸本の本文を甲類・乙類の2系統に分類した。真名本の本文が仮名本より古い本文であることを前提とし、乙類系本文に真名本系本文を取り入れ甲類系本文が成立したと考えられている。現存仮名本の最古態と言われる太山寺本は全巻乙類系統の本であるが、その他の諸本は甲類巻・乙類巻の取り合わせ本であり、純粋な甲類系統のみの本は発見されていない。

 本発表では、現在通説となっている村上学氏の仮名本『曽我物語』の諸本論の再検討を試みる。仮名本最古本とされる太山寺本、村上氏の本文分類において比較的乙類本文を多く持つ武田本甲本・円成寺本の写本3本と、後の刊本の本文の基となった十行古活字本の本文を実際に校合した結果から、仮名本本文を甲類・乙類に大別する分類方法について考察する。

 

(三)『建礼門院右京大夫集』七夕歌群をめぐって

                     文学研究科 博士五年 小林賢太氏

 『建礼門院右京大夫集』は、高倉天皇の中宮徳子に仕えた女房・建礼門院右京大夫の家集である。宮仕えの日々や資盛・隆信との恋にまつわる歌など様々な詠が収められているが、他の一般的な家集と異なるのは詞書で、分量・内容ともに日記的でもある。しかし、いわゆる題詠歌群と七夕歌群は和歌のみが並び、集の中では特異な存在となっている。この二つの歌群はこれまで様々に考察され先行研究も存するが、いまだ研究の余地があろう。そこで本発表では七夕歌群に焦点を当て、先行する七夕関連の和歌や『右京大夫集』の他の記事との関連を考察することで、七夕歌群の発生背景や家集内部における役割を考察していく。

 

 また、研究発表会の後、懇親会を予定しております。こちらの方も是非御参加下さるようお願い申し上げます。  

会場 かわうち

時間 十七時十五分(予定)から

懇親会費 三〇〇〇円